コラム相良先生第2回
第2回 夏休みをお健やかにお過ごしでしょうか
夏休みをお健やかにお過ごしでしょうか。夏休みになると思い浮かぶモンテッソーリ教育を受けた小学生の共通の特徴の一つとして、長い休みを自分で計画を立てて過ごすということがあります。先ず現在小学生のお母さんの文を紹介しましょう。
「何でも計画を立て、順序立てて着実に実行します。夏休みの宿題など、手際よく段取りします。ドリルは毎日一ページずつで何日までに仕上げ、自由研究はいつどこへ調べに行って製作は六日間で仕上げ、読書はこれだけの本を毎日決めた時間に読む、などと計画を立て、着実に実行します。私が「まとめてやってしまわないの?」と尋ねたら、「だいじょうぶ、計画立てててるから」と落ち着きはらって同じペースで取り組み、8月20日ごろには全部終わったようです。母親の私も見習いたいほどで、私も幼児期にモンテッソーリ教育を受けたかったと思います」(松井 環)
私が『モンテッソーリ教育理論概説』(学習研究社 1978)を書いたのは丁度25年前で、あの本の中に事例として紹介した子どもたちは、もう30歳を超えていますが、あの頃、話して下さったお母さんたちが「夏休み」を計画的に過ごすのに感心するということを共通におっしゃっていたことを思い出します。でも、その頃は、これがモンテッソーリ教育を受けた子どもの特徴だとは未だ考え及びませんでした。ところが先般、日本各地から寄せていただいた報告700人分の中に、「夏休み」或いは学校から「帰宅後」の時間を自分で計画して、段取りよく過ごす、という報告が多いのに驚きました。モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの顕著な特徴の一つは、「計画を立て、順序を踏んで実行する」「段取りが良い」ことです。なぜでしょうか?それは、モンテッソーリのお仕事に、きちんと始まりと終わりがあり、何かをやりたいと思うと、自分で用意を整え、終わると自分で元に戻すという習慣が身についているからです。これは、単に習慣として身についているのではなく、このような仕事の過程でワーキングメモリという前頭葉の大切な部分をフルに使うからです。ここでは脳科学の知識に踏み込めませんが、根拠があるのは確かです。モンテッソーリ教育の原理で日常生活をしっかり生きた子どもは一生ものの道具となる計画的な生き方を身につけるようです。
だから、就学前に家庭の中でお母さんが、子どもに自分ひとりで実行できるように、状況を整え、最初に、「準備」から「やり方」まで一つひとつ順序立てて、丁寧に教えてあげるといいですね。子どもの幼児期にしたお母さんのそんな努力は、小学生になった夏休みなどに上述のお母さんのような喜びになって戻ってくるでしょう。